2005年07月26日

ハリケーン・ポリシー


.....なにも今日こなくても。「やりますか?」という問い合せの電話も多い中、フィルムをガラガラ,キャスターで引っ張ってなかの芸能小劇場に出撃す。電車が止まってしまうこともあるので、1時間前に着きました。
「中止かと思った」という人もいましたが、中止にすると連絡等でやたら手間がかかる上に(連絡つかずに来る人もいるので)どうせオイラは来場しなくてはいけない。それなら開催しても同じなんですね。客が一人もいなくても、やった方が楽チンという訳。
早すぎるので喫茶店で時間をつぶす。「30人しかこないのでは」という予想のスタッフに決然と「70人だ!」と決めつけてみる。根拠などない。
6時に会場へ。ロビーの明かりをつけてもらう。
以前は「6時からだから!」と係員から怒られたように少しでも前につくと、まだ使っちゃだめだと不機嫌に言われたものだが、こう頻繁に使うとなると顔なじみとなって、早めでもイヤな顔をされない。しかし、早めに準備していると早めにくるお客さんがいるもので、こちらがなんか遅れて準備しているように思えて来るので、最近は断固開場時間を厳守することにしている。もちろん開映時間とか終了時間は厳守しない。
さて、開場時間前に来る観客一番乗りは常連のOさんではなく、なんと「世界一ウケたい雑文書き」唐沢俊一センセであった。(ここからは氏のmixi日記に対抗して書く)
こんな台風の日に一番乗りとは、はてさて真のアニメーション好きだなあ、とまず感心したものの、彼の日記に記されていた忙しさとは違和感がある。あんなに忙しくて、こんな(失礼)マンガエイガなんぞの会に来るものだろうか?
ハタと手をついた。あれは全部「ウソ」だったのだ。テレビに出ているという話、あちこちに書いているという話、打ち合わせを其処此処で繰り返している話も、ぜ〜んぶ嘘なんだ。さすが!希代の話術師、現代の無声、すこぶる非常。
これには長年付き合いのある僕も今日までだまされたなあ。その証拠こそ、彼の日記そのものにあるじゃないか。
あんな詳細な日記を書くには、誰でも「それだけで」丸一日はかかる。書いたことを実行している時間がないのはあきらかだ。いや、まいったまいった。(後日にはフィルムセンターで「鉄扇公主」を見ているし、一週間に2回アニメを見るような奴は無職のヒマ人だけである)
ということで、有名人と称する化けの皮が論理的にはがれたわけだが、そんなことは顔には出さずに、
「唐沢先生、どうぞお持ちください。僕ファンです。」と上映順番を書いた紙をさし出し、開場時間前にご案内する。
プログラムには『台風直撃のお化けアニメーション大会』 とある。今朝あわててつくったのだ。
フィルムつなぐのも、予約のハガキを郵送するのも、メールでお知らせするのもみんなあわててやっているのだ。
行き当たりばったりともいうが、その時の状況に合わせて細やかな心遣いを見せるこの姿勢は正にフレキシブルぶるというに相応しい。
まだ、本当にテレビに出ている著名人と錯覚している映写係の擬人君がうれしそうに挨拶する。
トンデモ落語会なども大好きな擬人君は、ムク犬のケツに入った蚤のようなわけのわかんない活躍をしているらしい。
慕っている彼をさっさと後にして唐沢センセは会場内で新潮社やあさシ新聞の人などと雑談している。 みんなだまされているんだ。会場には実業之日本社のA君もいるがだまされないでほしい。そういえば、昔僕と彼の二人でガロ編集部をだましたことがあったなあ、などと回想してみる。客がこないのでヒマだから。こんな日に来るアホは限られている。
誰かが「8,9月はないんですか?」と訪ねるので、わざと声をはりあげて会場の中にちょうど聞こえるようにして答える。
「ここの会場が人気で予約がなかなかとれないんだよね。芸能劇場だからってね、だいたい、(よく落語のまくらで使うフレーズを流用して)落語だの浪曲だの謡だのといったあってもなくても ドウデモいいようなもンがここを使うから、芸術が困るんだ。世の中にはアニメの上映会だけありゃアいいンだ!ここは<なかのアニメ劇場>に改称すべきじゃないか!」 とネタ(なんの?)になりそうなことを言い放つ。
会場の中でセンセの耳がダンボみたいになった気配を感じたので....「Baby mind don't you cry....」とやさしく子守唄を歌う気分で続ける。
擬人君に同意を求める形で....
「唐沢先生の日記を楽しみにしているのに最近は表の更新がすごく遅れてるようになったねえ。ウラのミクシィでメモ代わりのものをだーっと書きすぎていて息切れして、まとめる余力がなくなってんじゃないの?昔は次の日には「裏モノ日記に上映会のことも出てきたのに...最近は一ヶ月も遅れているじゃないか!もっともすぐ更新されてはあの日記を読むのに僕は毎日の活動時間の半分を取られてしまうので他に何もできなくなってしまうけれど....。」
すると、擬人くんが、
「カイチョーはミクシィで友人関係なんだからウラの日記を読めるじゃないですか」 とつっこむ。
そこに話題になっていると首を出す癖のセンセが出てきたのでさらに(しかたなく)テンションをあげて喜ばせることに。
「読むよ、読ンでるよ、コメントまでも。それで、オレはすでに毎日の半分を費やしているんだ。その他にちゃんとオモテの日記も読むわけだ。それでまた半日かかる。オモテウラ合わせると一日が終わるンだ。 オレの人生のこれからの余生は唐ちゃんの日記を読むことで終っちゃうじゃない!どうしてくれる?!」
その言葉に喜んでセンセは「呪いの黒猫」の最後の子猫の悪魔のような笑い顔をして、会場内に戻って行った。
自分でもじゃあ、更新してほしいのか、しない方がいいのかわからないが、確かなことはアニドウの出版などが遅れる原因があの日記のせいだと言うことだ。この日記ではなく。郵便ポストが赤いのも「裏モノ日記」のせいなのである。
7時にやや遅れて上映を始める。「上映作品、詳しくは本人の日記で」とセンセに言われたので、上映順に感想を残しておくと....。
いつもへんな映画の予告編を2本やって映写機を暖めているが、今日は10分間のSFダイジェスト、「THE DEADLY MANTIS」を上映した。ちまたでは「死の大カマキリ」とか呼ばれているけれど、本邦未公開なので正式な名前はまだない。ハリイハウゼンの映画の監督(ってなんか変だな)ネイサン・ジュランの1957年の作品。実物大の作り物の味わいがいい。撃退しようという飛行機がセイバーなのがまた良い。怪獣にはセイバーかF104Jだ。10分だから笑ってみているが、全編は見たくないなあ。
やっとアニメになって「フリップの化物屋敷」Spooks(1932)、ミッキーの生みの親アブ・アイワークスの作品。昔のゴムホースキャラのアニメーターとしては、最高の腕をもつアイワークスがディズニーから決別して作った作品だが、主人公のカエルはムミッキーの薄くなったイミテーション。シリー・シンフォニーの第一作「スケルトン・ダンス」他のシリーズそのままの骸骨の動きには「まだ、やっているよ」という感あり。キャラクター・アニメーションに飛躍できなかったんだなあ、と功労者ゆえに脱皮できなかった初期のマンガエイガの動きに淋しさを覚える。
「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大裁判」1971年は一部カットありで、資料としては別なスタッフだがなぜかくっついているエンディングは「作画監督大工原章」とあって疑問。たぶん適当にフィルムをつないだ結果だろう。
冒頭の人間達の顔かたちが水木タッチをわりに出しているので、面白い雰囲気になっている。
先月購入したばかりの「もうれつバットくん/BATFINK」Nuts of the Round Tableを早速上映。「バットマン ビギンズ」の公開記念? アメリカだってテレビ作品は動きませんよ、という好見本。たわいのなさが骨頂で、いつの世でもどこの国でも何度でも上映できる個性のなさは、カートゥーン・ネットワークのできるのを見越していたか。
プログラムに日本の古典ものも(色物として?)入れたいで、「塙団右衛門/化物退治の巻(證城寺の狸囃子)」1935 片岡芳太郎を加える。部分だがニュープリント。映写ストップの危険のないプリントは少ないので、中途半端でもご勘弁を。
数年前に購入した「ポパイの化け物退治」Ghosks Is the Bunk 1939 ディヴ・フライシャーもお化けネタということで加えた。本当はもっと豪快なポパイが見たいところだが、二巻物のポパイ・カラー作品が全3作入っているDVDが380円で売られていては、しばらく「ポパイとシンドバット」など上映する気になれない。白黒の豪快なものを探して次回は上映することにしよう。
まだ完成しないチャック・ジョーンズ自伝の出版記念のプロモーションのためにと、きばって購入した一連のジョーンズ作品だが、あまりやっていない「バニーとモンスター 」Hair Raising Hare 1946を上映。なかなか色はよいプリントで、ストーリーは弱いが、初期に近いやや寸詰まりのバッグスの演技を楽しめる一遍。
アニメのキャラより怖いのは人間ということを教えてくれる「Grandfather's Clock」Van Beuren Studios 1934 バート・ジレット。白塗りの時計に扮した役者の顔はこんご「美女と野獣」や「月世界旅行」を見るたびに、思い出す事確実。唐沢センセだけでなく僕もヌルいものの味を味わう末期的マニア症候群だが、センセは琴線に響き、こちらは金銭に響くばかり。
毎回実験的、前衛的なものを一本は入れようと企画しているので、今回は「赤死病の仮面」Masque of the Red Death 1970 パワオ・スタルテル。クロアチアの作品だが、ポーの原作の雰囲気を良く出しているのでは..(実は受付にごろごろしていて見ていない)。
毎回浦和から参加してくれるOさんのリクエストで1本はベティを入れている。今回は「ベティ博士とハイド」Betty Boop, M.D. 1932。どこでハイドが出てくるかというと、最後まで見ないとわからない。終わりが実に実に唐沢センセ好み。可愛いベティの唄が聞かれます。本当は最後にWDの「Mのお化け退治」Lonesome Ghost 1937を上映したかったのでだが、プリントがないので断念。
この時期のキャラクターの動きにはいつまでも感心させられる。色もシブくて、確かLDのミッキーセレクションBOXに選んだはず。本当に「出来なくて」残念だった。DVDで見直そう。
台風を恐れて、いつもより30分ほど早く終了するべく、まいて映写を進める。 今晩だけは打ち上げもなしだ!と決めていたが、終わってロビーにたむろしている友人の顔を見たら、いつもの「やみつき商店」に行く事になってしまった。
驚いたことに出たらすっきりと雨はやんでいた。 上映プログラムの紙が一枚も残っていない。70人の参加者ということになる。敵前逃亡は30人前後か。
唐沢夫人である著名な漫画家のK子さんもたまには来てくれないかなあといったら、唐沢センセを尊敬している擬人君いわく「あの方はアニメオタクが大嫌いだそうです!」
ああっ!女性の毒舌には100年しゃべってもかなわないなあ。でも、それなら何故......?
そんなことを考えつつ、フィルムをガラガラ引っ張って帰宅し、アンケート用紙を読む元気もなく寝てしまいました。

投稿者 anido : 2005年07月26日 00:06
コメント

あまりにも面白すぎるのでコメントは控えさせていただきます・・・。
日本一尊敬しているかいちょー&唐沢先生の両巨匠の日記に登場できて嬉しいなあ。
男子の本懐これに過ぐるものはない今日この頃です。

Posted by: 西川口 : 2005年08月01日 20:46
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