FILM 1/30e No.4 1997年3月発行
ウェールズからプスタへ 三つのアニメーション・フェスティバル

Cardiff 96
アードマン座談会/左から二人目ニック・パーク、次がピーター・ロード Photo by T.Namiki

なみきたかし

 昨年5月の末から6月中旬にかけて、ヨーロッパの四つの国を回り、三つの国ではそれぞれのアニメーションの催しに参加してきました。  アニメーション映画祭と一言でいっても、各国のお国柄が違うように、上映される作品や運営もかなり違いました。
 個々のフェスティバルがどう違うということは開催当日に配布されるそれぞれのディリー・ニュースを比べるだけでも感じとれます。
 カーディフのものは、「The Daily」(A4/8P/英語のみ)。表紙面が立派なフル・カラーオフセット印刷のもので、その日の代表的な作品のスチルが大きくのっていて「ちゃんと」した立派なものです。しかしこれは当然かなり前に用意されているもので、速報性で雰囲気を盛り上げるニュースとしては冷たい感じがします(フル・カラーの原稿はいまのところ一晩では印刷できませんので、あらかじめ片面を刷っておいて裏を後で刷るわけです)。むろん中には1色のページがあり、一日前に撮ったばかりの参加者のスナップなどの新鮮な話題もあるのですが(こちらはプリンター出力)、対抗ページにまた広告のカラー印刷があるので、全体にあらかじめ用意されたものという印象を拭えません。  これと対照的なニュース紙が、カチケメートの「SZEM SZOG」で、A5判4P/ハンガリー語のみのシンプル、いやはっきりいうと粗末なもの。学級新聞みたいなやつで昔のアニドウのガリバン会報を思い出させてくれます。A4の両面コピーを折っただけのものですが広告はないので、当日の予定、参加監督たちの落書きサイン集など会場の雰囲気はカーディフ以上に伝わります。資料としては後日の役にはあまりたちません。しかも必要最小限しか作らないために、午後になると必死にこちらから探さないとなくなってしまいます。 全く読めないものをただ抜け落ちる号がないように執着するのも妙な話ですが、ある日の号が1部しかなくて復部数揃えているぼくはどうしようかと困ったことがあります。しかしなんのことはない、ただコピーすればまったく同じものが出来ることに気がつき、なんとユージュアルなものであることよな、と関心したのです。まあ、いずれにしてもハンガリー語だけの紙面なんで、中身はまるでわかりませんが....。
 アヌシーと並ぶ歴史を持つ老舗のザグレブの日報は2色刷り8Pのもので、オフセット印刷ですが、中の写真はコピュータ処理のためか 荒い感じです。でも、一日前のスナップがたくさん載っていてなかなか楽しく、英語も併記されているので情報量は少ないのですが、一番好ましい雰囲気に出来上がっています。ちなみにアヌシーは同じ2色ながら、16Pとページも多くレイアウトも凝っています。凝りすぎて鼻につく点もありますが、これはぼくがへそ曲がりだからでしょう。全日(六日分)揃えると新聞というより雑誌のようで、まあアヌシーは格違いですね。

Bard on the winddow 「バード・オン・ザ・ウィンドウ」
 さて、最初の訪問地イギリスはウェールズ地方の首都、カーディフ。そこはロンドンから真西へ特急でちょうど2時間の人口30万ほどの都市です。 イギリスのフェスティバルは、一度アードマンの本拠地ブリストルで開かれた後、このカーディフに移り、今回で3回目を迎えました。実に真面目な運営のスタイルは変わらず、カタログ(ガイドブック)に載っている内容と実際が寸分の違いもありません。 プログラムの進行役などのスピーカーも記載されている人が来ているし、ましてや上映作品はその映写順番まで完璧です。  受付のカウンターも必要最小限の微笑みで迎えてくれますし、ぼくのプレスカードの発行など確認に手間取りました。けして他の所のように、まあいいか、とかいって発行してくれません。  同じ小さな島国から来たからといって甘えを許さず、他人とベタベタすることもなく爽やかで、クールでスマートな彼の国らしい応対が印象的でした。 (この意味は、ぼくはここの雰囲気は好きじゃない、ということです。)  上映作品は粒よりの作品ばかりという印象で、もし、ぼくが世界でひとつしかフェスティバルへ行かれないのなら、ここにくるかもしれません。実にコンパクトに良質な作品が並べられています。
 というのも、コンペテーションをする方式でなく(応募を受け付けるのではなく)、プログラム担当の委員たちが、予め精選した作品を集めて公開するからで、他のフェスの選考委員による(それも各国の)多様な価値観のもとで決められたゴッタ煮状態になる恐れがないからでしょうか。
  5月27日から6月1日までの六日間で上映されるプログラムは、約70ちょっと。重要なプログラムはほぼメインの会場のセント・デイビッズ・ホールで上映されます。ここは国立のコンサートホールで2000人収容の空間は映画にはへんな風に広く落ちつきません。国際映画祭をやっている渋谷オーチャード・ホールのようなものです。  ショートフィルム・プレミア(「クエスト」「カントリー・ドクター」など)というプロとインターナショナル・ショート・フィルム1〜4(「スウィッチクラフト」「レペテ」など)のふたつでいわば最近の世界のベストアニメ集が眺望できる。そして、オールタイム・アニメーション・フェイバリット(という古今東西ベスト(?)も1〜4(「白雪姫」「ダッム・アモック」「呪いの黒猫」「小さな兵士(グリモー)」など)とありこれだけで十分堪能できる濃いプログラムだ。
 長編でも「ジャイアント・ピーチ」が監督ヘンリー・セレック(「ナイトメア・ビファオア・クリスマス」)のスピーチ付きで特別公開された(原作者ロアルド・ダールはカーディフ生まれという)。長編では「甲殻機動隊」もあり、ジョン・ハラスとフリッツ・フレーリングへの追悼プログラム、まだ追悼にはちょっと早い特集プログラム(ウィル・ビントン、ハンガリーのチャバ・ヴァルガなどのスタジオ集)がいくつかあった。もちろん地元(近郷)アードマンの特集もあり、ニック・パーク、ピーター・ロードとディビット・スポルクストン達アードマン一家の座談会もあった。もっともこの時だけ彼らはいて、あっという間に帰ってしまったけれど。
 「シンプソンズ」で成功したクラツキー&シューポ・スタジオ特集では前昨までロシアで作品を発表していた、イゴール・カバリヨフがアメリカへ渡って完成させた新作「バード・イン・ザ・ウインドウ」を、世界初公開として発表した。

 こんなふうに、プログラム内容はケチのつけようのないもので、進行も遅延なく実にスマートなものではあった。どのプログラムも時間通りに始まるのだから。  作品に文句はないのに、なぜか楽しめなかったのは友人・知人が少なかったせいかもしれない。反面、気遣いをする必要のない自由があった。
カチカメット'96
カチカメット映画祭のシンボル

 あたり一面友達だらけになったのは次のハンガリーのフェスティバルだ。 ブダペストから電車で2時間の古都、ケチケメートで6月5日から8日までの四日間開かれた第4回目のフェスティバルは同時に第一回の国際長編アニメーション・フェスティバルでもありました。  短編は、ハンガリー国内のものに限られているコンペです。 イシュトバーン・オロスの「CRY!」、シャンドール・レイゼンビュファラーの「ECOTOPIA」などベテランの作品もそれなりで、前作をしのぐものでなく、新人トット・エヴァ「AMSTERDAM」などに今後の期待がのぞける程度で、実験精神あふれる作品で知られるハンガリーのものとしては、低調な感が否めません。劇場用長編やCMなどの商業的な作品と作家精神あふれる短編とを同時に製作していくという大変な挑戦をしているカチカメート・スタジオの姿勢に多大な共感を覚えるのですが、これからの道は本当に険しい状況のように見受けられます。マリア・ホルバットの作品がCMだったのはがっかりしました。(指導的立場のペーテル・ソボスライは合作の仕事でロンドンに出かけており、会期中顔を見られなかったのは本当に残念。)

Leo & Fred

楽しいレオとフレッドシリーズの最新作 The Hotday

 以前は、商業作品を量産したブダペストのパンノニア・スタジオの側に位置する若手が、エディット・ブレイエル(ギメシュ夫人)の指導の元に「ディプロマ・フィルム」のクレジットで意欲的な短編を作りはじめたようです。  ケチケメート・アニメーション・スタジオの所長であり、このフェスのディレクターでもある、フェレネク・ミクラス氏は優秀な短編が少ないこともあって、新しく長編のコンペテーションも今回から加えることとしたものだ。 国際審査員にはノルシュテインやニコル・ソロモンの姿もあり、出品者にはシュワンクマイエルもいて、国際的な顔ぶれにぼくの予想を越える大きなフェスティバルとなっていた。

しかし一番思い出に残ったのは、エクスカーション(遠足)で行った牧場の一日だ。その時見た騎馬民族の往時を偲ばせる乗馬のショーと名物の辛いグヤーシュ・スープの二つが忘れられないのは、アニメーションをいささか見すぎたせいかもしれない。牧場の一角に囲われたロバの親子が可愛くて、なでていたら子ロバに食べられるところだった!


ミュージアム準備室がテレビで紹介されました!

Chuck Jones Photo by Kazuha Okuda

 アニドウでは日本で最初のアニメーションミュージアムを建設する運動を進めています。 その活動を中心にアニドウの活動全般がテレビ東京の「ファミリー東京」という番組で1996年10月17日朝9時より紹介されました。
これまでに収集した貴重な資料の一部を公開しました。
政岡憲三の「力と女の世の中」の素材である切り紙を、その場でなみき自身がアニメートしたり、「くもとチューリップ」のセルや東映動画の作品資料などを次々に紹介しました。  この番組は東京都の提供によるものなので、職員の人はきっと見てくれるのではないかと思います。その結果、ミュージアム建設も東京都が取り組んでくれるとうれしいのですが.....。有楽町駅前の旧都庁舎後国際フォーラムの中などに作ってはどうでしょうか。 数少ない日本発の文化としてアニメーションはますます世界の注目を浴びていくと思うのです。


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